2010年07月22日

塚本先生世評「沈み行く日本をどうする」

塚本先生7月下旬世評です。
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「沈みゆく日本をどうする」  平成二十二年七月下旬  塚本三郎

菅総理の変節

政治の世界では、古来、政治や社会が行き詰った時に“王殺し”(支配者を辞めさせること)が起きて、人々の心を一新させ、市民を熱狂させて来た、と伝えられる。

鳩山、小沢のツートップに、政策の行き詰まりや「政治とカネ」の問題を一身に背負わせて、抱き合い心中をさせた、それが今の菅直人民主党ではないか。

民主党が、小沢自由党との合併を決めたのは、菅氏が民主党代表の時である。だから自分が求めた王を“王殺し”をしたインパクトは大きい。やがてそれの化けの皮がはがれたのが、今回の参院選の結果である。

小泉氏と菅氏とは、「郵政民営化」「官から民へ」の原点だけは絶対に譲らなかった。

菅氏の本領は、薬害エイズの時に見せた官僚との戦い。「脱官僚」であった。民主党も脱官僚の大看板である。だが財務大臣になると、財務官僚の説得になびいた。

総理になれば「官僚は政策のプロフェッショナル」「官僚の力を使って政策を進めていく内閣を作っていきたい」と変節を言いだした。

日本経済や、国家財政の窮乏を知らなかったとしても、その変わり身の速さには、国民だけではなく、民主党幹部も戸惑ったことであろう。

衆議院選の公約で、消費税は「四年間は増やさない」と言明したのに、一年を経ずして、自民党が一〇%ならば、それにならって議論すると云いだした。

菅直人は民主党の代表であるから、公のぶたで発言したことは、党代表としての公式発言と受け止めるのが常識である。ならば、九カ月前に衆議院選で勝利したときの、「マニフェストは詐欺」であったと自認したも同然ではないか。

菅代表が本気で、僅か九カ月前の党の公約の数々を否定するならば、まず民主党自体で、党議の変更をすべきである。その上で参議院選と共に、衆議院選挙をも堂々と加え、その変節を問うべく、ダブル選挙を行うことが当然である。

菅直人が変節ニだと評されるのは、自分の発言に責任を持たない人であるからだ。民主党の主張の基本を、思い付きで気楽に変更し、個人的に、その場で相手に迎合している。実行する、しないは、彼にとっては問題外のようだ。それを有権者ははっきりと見抜いた。

大衆は愚かにみえるが、いざという時には、決然と目覚める。

日本国民は、愚鈍であっても、国難が眼前に迫れば、以外にも勇気ある行動を起して、幾度かの国難を克服して来た歴史をもつ。近々では、明治維新が、そして敗戦後が、それを示して来た。

参議院選と民主党の敗因

昨年夏の「政権交代」後僅か半年を経て国政の大混乱が起り、そのまま鳩山政権から菅政権へと移ったが、日本国家の自主、独立の存続が危惧された。しかし、愚鈍にみえた大衆が、今回の参議院の選挙結果によって、明解に答えを示し、日本国家をして、再出発への道を開いてくれたようだ。

◎民主党は、鳩山・前政権の無知が目に余り、加えて外交防衛の分野、即ち普天間基地の移設の発言で迷走し、内輪では、「政治とカネ」で致命的打撃を受けつつ、選挙戦に突入した。

◎民主党が表紙を変えても、中身は変らない。それでも大衆の目先をそらせて、鳩山から菅に代えたことで、大敗を小敗に止めさせた一面がある。消費税の増税ばかりが敗因ではない。さりとて菅総理の、消費税発言のブレも不信をつのらせた。

◎結局、民主党政権は、衆議院選による「政権交代」が本物の政権ではなかった。

国民は民主党への権力交代で大きな誤算をしたと悟り、参議院選でその意思を示した。

◎政府予算をはじめ、外郭の医療や保険を含め、約二百兆円の国家予算の一〇%(約二〇兆円)の節約で、マニフェストを実現すると公約したが、「事業仕分け」では一兆円も削れなかった。ムダの主因は、官公労働組合であり、彼等は民主党を支持する労組で、身内を削ることが出来なかった。

◎国民は政局の安定を願いつつも、それ以上に重大な「民主党の暴走」を食い止めることに力点をおいた(在留外国人の地方参政権付与・夫婦別姓など亡国の案)

 自民党が改選で第一党になったのは、自力よりも、民主党の自滅によるところが大きい。

 一人区で大勝利となった勝因に、公明党の支援が在ったとみられる。

だがそのために、比例で公明党に返して、比例で負けたとの見方もある。

自民党が勝ったのではない。民主党が負けたのだ。自民党以外には期待できないとの望みを示した、だが二大政党への不満をうけて、みんなの党が伸びた。

新しいスタートラインとは

衆議院で民主党が圧勝したのは、マニフェストと呼ぶ「大衆迎合の詐術」であった。

だからこそ参議院選で、国民は、その化けの皮をはがした。菅総理は、参院選の敗亡にによって新しいスタートラインに立つと厳命した。

そのラインとは、素直に申せば旧民社党系議員や、松下政経塾出身の若い議員達の、政治生命を生き帰らせる道でなければならない。

彼等には、祖国愛も、国家観も、今日なお抱いているはずだ。それを封殺して来たのは、鳩山・小沢・菅達、首脳部の権力欲ではなかったか。民主党が破れたことは、結果として、民主党のみならず、日本国にとっても良いことだったと言うべきか。

先ず指導者自らの姿勢を正して、党内の国家観を統一し、確立すべきである。菅総理の相次ぐ「思い付き発言」が敗戦の主因であったとしても、昨夏以来の党の不信が根にある。

民主党は、衆議院の多数こそ最大の権力であるから、参議院の数の不足を他党に呼び掛けることは当然である。だからといって小細工は捨てるべきだ。

小政党を次々と拾い上げることよりも、その前にすることがある。

例えば、自民党に対して、政権与党の先輩経験者とし、諸政策について、虚心坦懐に語り合うべきだ。日本の国会運営について、また国政の基本理念について。

民主党が謙虚に、先ず大人の態度を示すことが、国民に示す敗者の誠実の姿である。 

今日の日本が直面している、内政と外交が危機の嵐の前に立たされていることを、国民は肌で感じ、危惧していることを悟るべきだ。

日本政界で、自称革新陣営の最大の欠点は、外交と防衛に対して無定見であることだ。

その本質は、大衆迎合(ポピュリズム)であって、未だ責任ある与党としての経験が少なく、自身が政治家としての「国家観が無い」ことに起因する。それが、そっくりそのまま民主党にも言い得る。

また、その根本には、憲法問題が「ガンの如く」横たわっている。日本が独立国らしからぬ、外交、防衛の障壁となっている、民主・自民両党は、それを取り除くための第一歩を踏み出すべきだ。政党にとって、外交と防衛は、国家にとって最大の任務である。

菅総理は、本心か否かは別にして、日米同盟の必要性、即ち防衛について、理解ある発言を行なっている。しかし、この最重要課題も、民主党内には否定的人物も少なくない。

加えて菅総理自身も、かっては非武装中立の論者であったから、党内の動向によっては、保身のため、いつ変節するかもしれないと危惧する。党代表だからとて、最重要課題に対しても、慎重に党内の議論を重ねた上での発言ではないからこそ、気にかかる。

国際政治学者・大磯正美氏は次の如く云う

◎鳩山首相は何の留保もなく「これまでアメリカに依存しすぎた」とアメリカ離れを宣言

し、普天間飛行場を「出来れば国外に」と公言して、米海兵隊の事実上の撤退を要求した。

このシグナルに敏感に反応したのが中国である。

◎今年三月には六隻、四月には潜水艦二隻を含む十隻の中国艦隊が、沖縄本島と宮古島

の間を抜けて太平洋に進出した。潜水艦は公海であれば潜ったままでもいいのに、わざと浮上航行し姿を見せ付けた。おまけに艦載ヘリを二度も日本の護衛艦に異常接近させ、のちにそれを抗議(遠慮して事実確認と日本は発表)した日本側に対し、中国側は「日本の監視活動が悪い」と言い返したという。

◎翌五月、今度は海上保安庁の測量船が東シナ海の日本の排他的経済水域内で、中国の調査船に「我が領海だ」として追い回され、とうとう諦めて帰港するという事件が起きた。

◎また鳩山首相は辞任の数日前、臨時に召集した全国知事会議の席で、尖閣諸島に関して

「帰属問題は日中当事者同士で議論して結論を出す、と理解している」と、まるで中立の第

三国のような言い方をした。――これは中国にしてみれば上指差しから牡丹餅が落ちてきたよう

なものだ。「尖閣を占領しても問題はない」と受け取った指導層があるに違いない。特に強

気の中国海軍首脳にはその可能性が強い。中国は一九九二年以来、国内法で東シナ海、南

シナ海の大陸棚と、台湾およびその附属諸島はすべて中国領と定めている。中華に属する

人民にとって、尖閣諸島は日本が不法占拠している中国領土であるから、それを取り返す

のに「議論して結論を出す」必要はないのである。これが中国の考えなのだ。

◎そのための最善の一手は、菅首相とオバマ大統領が合意した「同盟深化」の第一弾として

位置づけることだ。すなわち、日米安保の適用範囲に尖閣諸島が含まれるという事実を、改めて共同声明などの「外交文書で明示的」に確認することである。

そのためには、無人島である現状を改善し、かつて民間工場のあった魚釣島への自衛隊の常駐と港湾整備を、日本側が率先して実現しなくてはならない。

民族滅亡の三原則

豊かになることを第一とした、物質中心の日本政府の方針は、心の豊かさを忘れ、平和を守るための自立心を忘れて、安全と防衛を米国に依存し続けた結果である。

経済の国家目標は、ほぼ達成したが、大切な、日本人としての大和魂が消えつつある。

戦場では優柔不断は許されない。今の日本は戦場に在るとの認識が指揮官に無い。それは、泰平が永遠に続くと勘違いしているからなのか。迷える日本人に対して、周辺国の中には虎狼が牙をむいていると覚悟し、世界の民族の歴史と運命を学ぶべきである。

⑴ 自国の歴史を見失った民族 ⑵ 理想を見失った民族 ⑶ すべての価値観を、物で捉え、心の価値を見失った民族。民族滅亡の三原則、即ち「歴史の教訓を忘れるな」。

HPはこちら
http://www.ritouki-aichi.com/library_tsukamoto_h2207_2.html

PDFはこちら
http://www.bunka.tank.jp/h2207_2.pdf
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