2012年08月31日

【知道中国 763回】「計画生育家庭」の「意外傷害保険」と「手術安康意外傷害保険」

<樋泉克夫愛知大学教授コラム>
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【知道中国 763回】              一ニ・六・仲三

――「計画生育家庭」の「意外傷害保険」と「手 術安康意外傷害保険」

道路を横切りホテルの壁に沿って歩くと、目立つ 場所に新聞紙見開き2頁大の
紅い紙が貼られていた。最上部には「通知」、最下部には「龍山社区居民委員会
 2012.4.16」と墨痕鮮やかに記され ている。どうやら、この一帯を龍山社区と
呼び、町内会のような組織とでもいうべき居民委員会による通知らしい。だが町
内会の ようなとはいうものの、日本の町内会とは大違い。実際は共産党の末端
に位置し、一般民衆を管理するための組織だ。

「龍山社区管轄区各住民へ/計画生育系列保険は 人口と計画生育工作の推動器
であり、社会の和解と家庭の安定を維持するための穏定器である。国務院国発
〔2010〕23号文書と雲政発〔2006〕174号文書に基づき、ここに 保険に関し以下
を通知するので、宜しく承知されたい。/一、手続き受付時間:2012年4月16日
から5月25日まで。/二、申請者は 戸口簿(身分証でも可)を持参し社区の受付
にて処理すること。/三、計画生育家庭意外障害保険につき、一人っ子家庭、女
子双 子家庭は各自15元を、他の家庭は30元を負担すること。計画 生育手術安康
意外傷害保険につき、一人っ子家庭、女子双子家庭は7元を県と市の財政で補助
する。その他の家庭の費用は各自負担のこと。/以上、特に通知す」

以上が全文だ。推動器やら穏定器などと場違いと も思える表現のようだが、特
別なことを指しているわけではない。「器」は手段といった意味合いだろう。
1958年以来、中国では国民を 農村戸口と都市戸口とに分け、その移動・移住を
厳格に禁止してきた。最近では戸口による厳格な管理はなし崩し的に緩まっては
いるものの、全国規模で撤廃されたわけではない。ここに示された戸口簿は、住
所証明と考えてよさそうだ。

計画生育家庭意外障害保険と計画生育手術安康意 外傷害保険の内容がよく判ら
ない。質問しようと思ったが、残念なことに誰も歩いていない。ならば考えるし
かない。一人っ 子家庭と女子双子家庭の負担が軽い点、あるいは公的な補助が
ある点にヒントがあるのか。じつは10年ほど前に一人っ子政策 に就いて調べた
ことがあるが、居民委員会のお節介なオバチャンたちが目を光らせていて、妊娠
している女性に目を付けると1人 目か否かを問い質し、2番目以降なら連れ添っ
て 病院に行き堕胎手術を受けさせるといった事実を知って吃驚したことがあ
る。意外障害保険とは子供に対する傷害保険であり、手 術安康意外傷害保険は
強制的な 堕胎手術の際の突発事態を想定しての保険かもしれない。強制手術で
健康を害す、あるいは最悪の事態が生じているということだ ろうか。なんとも
遣り切れない 話だが、保険制度を施行しようとしているだけでも進歩と考える
べきだろう。

最近の報道によれば、現在の人口抑制策を厳格に 実施し続けると、100年後には
中国の人口は5億人、ということは現在 の3分の1ほどに激減するとの研究 が発
表されたとのことだが、世界戦略からいって膨大な人口が最強の武器であると同
時に最大の弱点(なんせ喰わせ続けなければ ならない)であることを考える
と、中国歴代の為政者にとって人口政策は最大の難問であり、共産党政権にとっ
ても事情は同じはずだ。

街をほっつき歩いているうちに出発時間となり車 に乗り込む。

龍陵の市街地を抜けると、古山が「滇緬公路は、 龍陵の街を貫いて東山の前方
に延び、そこで三叉路になる」(『龍陵会戦』)と綴るように三叉路にでた。
「右へ行けば拉孟 に至る。左が騰越へ行く道である」。三叉路を右折し拉孟に
向かう。日本兵の歩いた道だ。《QED》
posted by 親善大使 at 00:43| Comment(3) | TrackBack(0) | 樋泉です。
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