2012年09月01日

【知道中国 766回】「党県委員会の懇切で強力な指導」という“枕詞”は必須です

<樋泉克夫愛知大学教授コラム>
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【知道中国 766回】                       一 ニ・
六・仲九

   ――「党県委員会の懇切で強力な指導」と いう“枕詞”は必須です

国 境の南の異国に住みついている漢族の末裔こそ、中国にとっては最上の戦略
資産といえるだろう。中国しか持ち合わせていな い戦略資産を踏み台にして、
北京は 「熱帯への進軍」を着々と推し進めている。今後、北京は華人という人
的戦略資産をさらに活用するに違いない。やはり華人 という存在は、この地域
における永 遠の難問なのだ。

――やがて霧が立ち込め、空からポツポツと落ち てきたかと思うと、程なく篠つ
く雨に変わった。急坂を進むのは危険と、車は峠の鄙びた食堂前で雨宿り。つい
でに昼食。暇 ついでに厨房に入り込み、料理人と話す。30歳前後だろうか。若
い女 房と2人で経営しているとのこと。ゴーゴーと唸りをあげて燃え盛る火に
鍋をかけ、次々に料理を仕上げていく手並みは見事なも の。昆明で料理修業を
していた が、結婚を機に生まれ故郷のこの山里に戻ってきた。こんなチッポケ
な店だが、前の通りの通行量が増えているばかりか、客が値 の張る料理を注文
してくれるよ うになったので、売り上げは順調に伸びているとのこと。こんな
ところにも金満経済の波が及んでいるのかと、驚くばかり。

食堂の前の通りを挟んだ向かいの壁に目を遣る と、なにやら印刷された真紅の
張り紙。これも新聞紙見開き2頁大。雨の通りを横切っ て、その張り紙の文字を
読む。

最上部中央に「2011年 龍陵一中高考快訊(一)」と大きく書かれたハデな張り
紙は、龍陵第一中学が張り出した入試成績表だ。受験生の獲得点数が有無を言わ
せず白日の下に曝け出されている。バカか悧巧か 一目瞭然。個人情報の保護も
クソもあったものではない。

「龍 陵一中高考快訊(一)」は、「(共産党)県委員会、県政府の懇切で強力
な指導、教育局の深い心から示された関心、社会と 兄弟学校の関心と支持の下
で、我が 校は教育改革を絶え間なく深化させ、学校管理を強化し、教学に関す
る質量を高めることに努めてまいりました。本年、我が 校高級中学3年卒業生
は3年間に及 ぶ必死の学習によって、難度がさらに増している今年度の高考で
はありますが、我が校は格段の好成績を挙げることができま した」と書き出さ
れている。

次に示されているのが個人成績だ。

「一:王偉 590点 全県の理系第一位/段莉芝:540点 全県文系第一位/体育
専門部門では空前の成績。楊必 伝:文系の成績は425点。体育系成績は88.06
点。重点体育大学に入 学。/二、我が校大学受験生のうち、希望大学入学可能
得点者は43人。王偉 590点〜(51人の名前と得点が列記さ れ)〜黄楠 505
点」とあり、以下、詳し い得点分布や平均点などを交え詳細な入試分析が続
き、「以上のように、我が校に入学した暁には大学入試合格は100%保証致しま
す」と記 す。

かくて張り紙は、「勇躍として我が龍陵一中の受 験を希望する学生諸君を歓迎
します。龍陵一中こそ、大学合格というキミの大きな夢を実現させる楽園であ
る!/龍陵県第一 中学 2011年6月26日」と、一段と大きな文 字で結ばれている。

「高考」とは全国一斉に実施される大学入試のこ と。公立だろうか私立だろう
か。おそらく龍陵県第一中学もまた必死に学生を集めなければならない事情があ
るはず。なりふ り構ってはいられない。県下の優秀な生徒を掻き集め、有名大
学に送り込むしなかない。

「学問商店」、略して「学店」の波は龍陵のよう な田舎にまで。商売、ショー
バイ。《QED》
posted by 親善大使 at 07:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 樋泉です。
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